激動するもの

さういふ言葉で言へないものがあるのだ
さういふ考方に乗らないものがあるのだ


さういふ色で出せないものがあるのだ
さういふ見方で描けないものがあるのだ


さういふ道とはまるで違った道があるのだ
さういふ図形にまるで嵌らない図形があるのだ


さういふものがこの空間に充満するのだ
さういふものが微塵の中にも激動するのだ


さういふものだけがいやでも己を動かすのだ
さういふものだけがこの水引草に紅い点々をうつのだ


高村光太郎